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アルギン酸の物性

Physical Properties

ゲル化

アルギン酸の最大の特徴は、共存する陽イオンの種類と濃度によって、物性が著しく変化することです。
なめらかに流動する水溶液からしっかりとしたゲルへ物性が瞬時に変化します。

多価カチオン濃度

ゲル化のメカニズム

アルギン酸は、マンヌロン酸(M)とグルロン酸(G)という2種類のウロン酸が直鎖状に重合してできる多糖類です。
この鎖状構造には、G-G結合からなる「Gブロック」と、M-M結合からなる「Mブロック」が含まれます。

Ca2+のような多価の陽イオンが存在すると、Gブロックのカルボキシル基のマイナス電荷がCa2+に引き寄せられ、架橋を形成します。
2つのアルギン分子が架橋を形成すると、分子鎖は自由度を失い、ゾル(流動性のある水溶液)からゲル(弾性体)へ転移します。
この架橋構造は、GブロックがCa2+を包み込む形で形成され、その形状が卵が卵ケースに収まる様子に似ていることから「Egg Box Junction」と呼ばれます。

  • 瞬時に起きる
    ゾル⇔ゲル転移

    イオン交換反応による架橋形成は、瞬時に起こります。そのため例えば、アルギン酸ナトリウムをカルシウム溶液に滴下すると、Ca2+と接触した表面が瞬時にゲル化して、中は液体、表面がゲルという球形ゼリーをつくることができます。
    この現象は、人工イクラの製造などに応用されています。

  • 自由自在の
    ゲル強度

    Egg Box JunctionはGブロック鎖に特有の架橋構造であるため、グルロン酸(G)の比率が高いアルギン酸は剛直で高強度なゲルを形成します。逆に、マンヌロン酸(M)の比率が高いアルギン酸は柔軟で低強度のゲルを形成します。
    様々なゲル強度をもつアルギン酸を自由に選択することができます。

  • 抑制が効く
    ゲル化速度

    アルギン酸のゲル化速度は、Ca2+の状態を制御することで調整できます。具体的には ①カルシウム塩の種類を選ぶ、②キレート剤を用いてカルシウムイオンの利用可能性を調節する、③溶液のpHを調整するといった方法があります。
    これにより、用途に応じたゲル化速度のカスタマイズが可能です。

ココまでの説明を動画で見る

耐熱性

アルギン酸は、寒天やペクチン、ゼラチンなど他のゲル化剤が冷却によってゲル化するのと異なり、イオン交換反応によりゲル化します。そのためアルギンのゲルは、どれだけ加熱しても水溶液に戻ることはなく、加熱殺菌や加熱調理、凍結融解を繰り返しても型崩れしません。

粘性

アルギン酸の粘度は、温度やpH、分子量や濃度などの条件を調節することで自由自在にコントロールすることができます。
ここでは、アルギン酸ナトリウム水溶液を例に、その粘度に影響を与える要素を解説します。

分子量

分子量が大きくなる(=分子鎖が長くなる)と、分子鎖同士がより強く絡み合い、水溶液の粘度は指数関数的に上昇します。

アルギンの粘性グラフ

濃度

濃度を上げると、分子間の相互作用が強まり、粘度は対数的に上昇します。

アルギンの粘性グラフ

pH

水溶液のpHを下げると、カルボキシル基の解離が抑えられて不溶化します。不溶化した分子鎖が増えると、水溶液の粘度(みかけの粘性)は上昇しますが、pHを極端に下げるとアルギン酸が析出し、粘性は失われます。

アルギンの粘性グラフ

無機電解質

食塩など、一価の陽イオンを含む無機電解質を水溶液に加えると、溶液のイオン強度が上がり分子が収縮します。これにより溶解度が低下し、粘度が下がります。

アルギンの粘性グラフ

温度

水溶液を温めると、分子運動が活発になり粘度が低下します。逆に、冷却すると粘度は上昇しますが、凍結融解をしても粘度への影響はありません。

アルギンの粘性グラフ

保存期間

アルギン酸ナトリウムは長期間放置すると分子量が低下して粘度が下がりますが、この粘度低下は温度が高いほど早く進行します。

アルギンの粘性グラフ

幅広い選択肢

当社では、ほとんど粘性を感じない超低粘度タイプから、なめらかな粘性を発揮する標準タイプ、ジェルのようなチクソ性を発揮する超高粘度タイプまで、バラエティ豊かなアルギンを取り揃えています。

超低粘度タイプ

アルギン酸の水溶液は、天然の水溶性ハイドロコロイドの中でも最もなめらかで、ニュートン流体に近い流動性を示します。特に、超低粘度のアルギン酸は濃度をせん断力をあげてもほとんど粘度が変わらないニュートン流動を示します。

超高粘度タイプ

超高粘度のアルギン酸は、水溶液にせん断力を加えると粘度が低下し、静置するとゆっくり元に戻るチクソトロピー流動を示します。
水溶液はジェル状で、テクスチャーに豊かな変化をもたらします。

アルギン酸エステル(PGA)

アルギン酸エステルは、耐酸性、耐塩性に優れた増粘安定剤です。アルギン酸塩類の場合、カルボキシル基の持つ高いイオン交換能により、ゲル化剤や安定剤として特徴的な機能を発揮しますが、その反応性の高さゆえに、酸性領域や塩濃度の高い条件下ではゲル化や沈殿が生じ、利用の妨げになることがあります。アルギン酸エステルは、アルギン酸のカルボキシル基をエステル化することで反応性を抑え、アルギン酸塩が使いにくい分野でも優れた増粘、安定効果を発揮します。(詳しくはこちら

濃度

濃度を上げると、分子間の相互作用が強まり、粘度は対数的に上昇します。

アルギンの粘性グラフ

耐酸性

pH3~5の酸性範囲で安定した粘性を発揮します。
アルカリ条件ではエステルが分解して粘度が低下します。

アルギンの粘性グラフ

耐塩性

食塩など、一価の陽イオンを含む溶液中でも、安定した粘性を示します。

アルギンの粘性グラフ

Ca2+など、2価以上の陽イオンの存在する環境下でもゲル化せず、増粘安定効果を発揮します。

アルギンの粘性グラフ

乳化安定性・たんぱく安定性

構造中に親水基と親油基を併せ持つアルギン酸エステルは、油と水の乳化安定効果を発揮します。
また、たんぱく質と結びつき、構造を安定する性質も持っており、ビールの泡の安定、麺・パンのグルテン形成改良、乳タンパクの分散安定、メレンゲの形状安定などに活用されています。

酸性乳たんぱくの安定効果

アルギンの粘性グラフ

アルギン酸関連商品のご紹介

それぞれの商品の特徴は
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アルギン酸の使用例・応用例は
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