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医薬品・医療機器

アルギンは医薬品添加物規格や医薬部外品原料規格に収載されており、医薬品の賦形剤や崩壊剤,粘稠剤などとして利用されています。
当社は2014年に世界で初めての注射剤用原薬アルギン工場を設立しました。アルギンは、人の命を救い、健康を守り、痛みを和らげる素材として世界で活躍しています。

応用例・効果

※様々なタイプのアルギン酸類を「アルギン」と総称しています。応用例毎に正確な物質名を注記していますのでご参照ください。

歯科印象剤

歯科印象剤

アルジネート印象材は歯科治療には欠かせない存在です

歯科印象剤

歯科治療の現場では、歯型を取るための型取り剤(歯科印象剤)の基剤としてアルギンが利用されています(「アルジネート印象剤」と呼ばれて普及しています)。

歯科印象剤にはアルギンとカルシウム塩、リン酸塩、珪藻土などが巧みな配合で処方されていて、水を加えて混練するとアルギンとカルシウムのゲル化反応が始まります。反応時間はリン酸塩によってコントロールされており、歯に押しつけているわずかな時間でゲル化が完了します。アルジネート印象剤は比較的安価で、操作が簡便(失敗しづらい)、細部の印象を正確に写し取ることができるなどの使い勝手の良さから、国内外の歯科治療の現場で広く利用されています。

【使用するアルギン】
アルギン酸ナトリウム(商品名:キミカアルギン)、アルギン酸カリウム(商品名;キミカアルギンKシリーズ)
キミカアルギンKシリーズ

消化性潰瘍用剤

消化性潰瘍用剤

胃酸との接触でゲル化して出血部を覆い、疼痛を緩和します

消化性潰瘍用剤

消化性潰瘍の治療薬に、酸性条件下でゲル化するアルギンの性質が生かされています。この内服薬の成分はまさにアルギンの水溶液そのもの。アルギン水溶液が胃酸と接触すると不溶化して胃壁全体を覆います。胃の内面が傷ついている場合、アルギンが血液中の鉄やカルシウムと反応して出血部を覆うようにゲル化するため、胃酸による傷口への攻撃が和らぎ、疼痛を緩和します。副作用が少なく、患者への負担の少ないマイルドな内服薬として、長年処方されている医薬品です。

【使用するアルギン】
アルギン酸ナトリウム(商品名:キミカアルギン)、アルギン酸塩類
キミカアルギン

制酸剤

制酸剤

胃酸過多を抑えるとともに、胸焼けや胃もたれも緩和します

制酸剤

アルギンの水溶液に制酸剤、発泡剤を組み合わせた医薬品が海外で普及しています。服用すれば胃酸過多を抑えると共に、胃酸で不溶化したアルギンが浮上性のフロックを作って胃の上部を塞ぎ、内容物の逆流を防ぎます。その結果、胸焼けや胃もたれの症状が緩和されるという内服薬です。

【使用するアルギン】
アルギン酸ナトリウム(商品名:キミカアルギン)、アルギン酸塩類
キミカアルギン

崩壊剤

崩壊剤

錠剤から薬効成分を放出するタイミングをコントロールします

崩壊剤

硬く打錠した錠剤を消化管内で適度に崩壊させ、薬効成分の放出を助ける補助剤を「崩壊剤」と呼びます。一般的な崩壊剤にはデンプンなどの粉末が使われ、服用後に胃の中で水分を吸って膨潤することで、錠剤を崩壊(薬効成分を放出)させる働きをします。

アルギンには酸性条件下で不溶、アルカリ条件下で可溶になる性質があります。そのため、アルギンを崩壊剤として配合すると、錠剤中のアルギンは胃の中(酸性)では膨潤しませんが、pHの高い消化管へ進むと膨潤し、錠剤を崩壊(薬効成分を放出)させます。このように、薬効成分を放出するタイミングをコントロールするためにアルギンが利用されています。

【使用するアルギン】
アルギン酸(商品名:キミカアシッド)
キミカアシッド

点眼薬

点眼薬

薬効成分が眼球表面に長時間滞留し、より効果的に作用します

点眼薬

アルギンを配合した点眼薬は、点眼後に涙液中の微量なカルシウムと反応して増粘します。その結果、薬効成分が眼球表面に滞留する時間を延ばすことができます。
点眼薬の滞留時間が延びる分、点眼薬の濃度を下げることができ、薬による刺激が抑えられます。また点眼回数が減ることで患者さんのストレスも軽減できます。
点眼薬そのものがはじめから粘性を帯びていると、「差し心地」が悪く、眼全体にベタベタした感触が残ってしまいます。点眼して初めて粘性を帯びるというアルギンの特性は、使用感のよい点眼薬を開発する際に重宝されています。

【使用するアルギン】
アルギン酸(商品名:キミカアシッド)
キミカアシッド

創傷被覆材

創傷被覆材

傷口(創傷面)の湿潤状態を維持して傷を早く治します

創傷被覆材

かつては切り傷の治療と言えば、傷口(創面)を乾かしてかさぶたを作る方がよいと言われていました。しかし最近では、創面はなるべく乾燥させずに湿潤状態を維持する方法が主流となっています。

創面の湿潤状態を維持する「創傷被覆材」にアルギンを繊維状またはスポンジ状に加工したものが利用されています。
アルギンを用いた創傷被覆材は、創面から滲出する体液によって接触面がゼリー状に膨潤します。これが湿潤状態を維持するのに役立つと共に、被覆材を剥がすときに痛みを感じにくく、また創面を傷めません。褥瘡(床ずれ)のような範囲の広い創傷治療に利用されています。

【使用するアルギン】
アルギン酸ナトリウム(商品名:キミカアルギン)、アルギン酸塩類
キミカアルギン

粘膜隆起剤

粘膜隆起剤

早期消化管がんの内視鏡治療において注目されています

粘膜隆起剤

早期消化管がんの内視鏡治療では、病変と筋層の間の粘膜下層へ局注液(医療機器)を注射で注入し、病変が発生している粘膜を持ち上げて(人工的に隆起させて)、病変部を粘膜ごと切除します。この医療機器の主原料として、低エンドトキシンアルギンが使われています。
同じ目的の既存商品ではヒアルロン酸が使われたものも実用化されていますが、動物由来の原料の使用には安全性を懸念する声も少なくなく、植物性のアルギンに注目が集まっています。

【使用するアルギン】
医療用アルギン酸ナトリウム
(商品名:低エンドトキシンアルギン酸ナトリウム)
低エンドトキシンアルギン酸ナトリウム

再生医療

再生医療

生体に無作用なバイオマテリアルとして注目されています

再生医療

再生医療の分野でも、アルギンのユニークな特性に着目した研究開発が進んでいます。加熱や冷却なしにゾルからゲルへ変化するアルギン独特の物性は、アルギンを任意の場所へ局注してからゲル化させたり、生体組織を生きたまま懸濁してゲル化させたりする操作を可能にします。この特性が組織再生の足場や、3Dバイオプリンターの基材などに応用されています。

再生医療に利用されるバイオマテリアルには、他にもコラーゲンやヒアルロン酸などが取り上げられることが多いですが、動物由来の素材は体内に導入した時に何らかの生体反応を引き起こすことがあります。一方、海藻由来のアルギンはそうした反応が全く出ないことが確認されており、体内での分解もゆるやかです。「生体に投与しても一切無作用である」ということは、バイオマテリアルとしてのアルギンの大きな特徴と言えます。

【使用するアルギン】
医療用アルギン酸ナトリウム
(商品名:低エンドトキシンアルギン酸ナトリウム)
低エンドトキシンアルギン酸ナトリウム