アルギン酸
アルギン酸は、構成糖であるウロン酸のカルボキシル基が遊離酸(-COOH)のかたちになった酸性の物質です。
アルギン酸は水に溶けないので、それだけでは増粘剤、ゲル化剤としては機能しません。アルギン酸を水に溶かすには、アルカリを加えて中和してやる必要があります。アルギン酸は、NaやKなど1価の金属イオンと塩を作って初めて水に溶けます。一方で、CaやFeのような、多価金属イオンと塩を作った場合は、水に溶けなくなります。したがって、一般に増粘剤、ゲル化剤として流通しているアルギン酸は、正確にはアルギン酸ナトリウムであることが多いのです。
アルギン酸は水に溶解しないため、粉末を水中に投じるとそのまま沈殿します。しかし、特殊な加工を行うことで、水を吸って膨潤しやすいタイプのアルギン酸を作ることができます。膨潤タイプのアルギン酸は、吸水すると見かけの粘性が高まり、ボテッとしたくず湯状の膨潤液になります。このように、アルギン酸は膨潤タイプと非膨潤タイプの2種類に大きく分けられます。
アルギン酸はアルギン酸ナトリウムなどの塩類よりも熱に弱く、短時間で分子量(重合度)が低下することが知られています。分子量を維持するためには、なるべく低い温度で保存する必要があります。
◇食品添加物としてのアルギン酸
アルギン酸は、食品分野では麺やパンなどの小麦粉製品に対する品質改良材として利用されています。小麦粉生地にアルギン酸を加えると、生地に適度な保水性が付与されるので、麺やパンにソフトな食感をもたらします。また小麦粉中のデンプンやタンパクに作用して、調理後、あるいは焼成後の生地組織を補強するとも言われています。
アルギン酸はナトリウムやカリウムなどと塩を作っていないことから、日本では既存添加物に分類されています。
[応用例]
食品に対するアルギン酸の具体的な応用例としては、次のようなものがあります。
- パンの物性改良
- 菓子類の物性改良
- パン粉の食感改良
- 即席麺の麺質改良
- コンビニ用チルド麺の食感改良
- 麺のほぐれ性向上
[食品への表示]
アルギン酸を食品にご利用いただく場合、原材料欄への表示は、用途名と物質名を併記して下さい。ただし既存添加物であるアルギン酸は、使用方法によって個別物質名の表示をしなくて良い場合があります(特例1,2)。
アルギン酸は、原料及び製造工程にアレルギー特定原材料を使用しておりませんので、アレルギーに係る表示は不要です。
- 用途名:
- 「増粘剤」「ゲル化剤」「安定剤」「糊料」のうち、いずれか最も適切なもの
- 物質名:
- 「アルギン酸」または「昆布類粘質物」(アルギン酸の別名)
- <表示例>
- 増粘剤(アルギン酸)
糊料(昆布類粘質物) …など
- 注1:
- アルギン酸ナトリウムやCMCのような指定添加物と併用しても、「増粘多糖類」とすることはできません。あくまでも既存添加物同士を併用した場合に限ります。
- 注2:
- 複数の増粘安定剤(既存添加物)を併用しているとき、一部の物質を類別名「増粘多糖類」として表示し、他の一部を個別物質名として併記することはできません。
- 注3:
- 増粘多糖類と他の増粘安定剤(指定添加物)を併用した場合は用途名を省略できません。
<表示例> 増粘剤(CMC,増粘多糖類) …など
[食品への表示に関するご注意]
上に示した表示法・表示例は、作成時点で得られた最新の情報に基づいて記載しておりますが、
内容の正確さを保証するものではありません。
関係法令の改正や、実際の食品に使用される他の成分との組み合わせによって、表示方法は随時変化する場合がございます。
食品への表示にあたっては、最新の法令に基づく適切な表示方法をご確認下さい。
◇アルギン酸の安全性
アルギン酸とその塩類の安全性は国連機関(JECFA:FAO/WHO合同食品添加物専門委員会)で評価され、ADI(一日許容摂取量)は「特定しない(注4)」という結果になっています。
天然海藻由来のアルギン酸は、BSEや遺伝子組換え、残留農薬、食物アレルギー等の影響のない安全な物質です。あらゆる場面で、安心してご利用下さい。
- 注4:
- アルギン酸とその塩類は、ほぼ同等の安全な物質と考えられることから "Group ADI"で評価され、「アルギン酸として」の評価が示されています。
◇医薬品への応用
通常は水に溶けず、アルカリで中和されると溶解するアルギン酸の性質が、特殊な錠剤の崩壊剤に利用されています。
服用した錠剤が消化器の中できちんと崩れ、薬効成分を放出させやすくするため、錠剤の中には水を吸って膨らむ物質(崩壊剤)が配合されています。一般的にはデンプンなどの粉末が使われますが、アルギン酸を崩壊剤として配合すると、デンプンとは違った性質の錠剤をつくることができます。
この錠剤は、酸性の胃ではアルギン酸が溶解しないため崩壊剤として機能せず、錠剤の形を保ったまま腸へ送られます。一方、腸の中で徐々に周辺のpHが高くなるにつれ、アルギン酸が溶け始め、そこで初めて錠剤が崩壊して薬効成分が放出されるのです。このように、胃で溶けずに腸で溶けるタイプの錠剤を設計する際に、アルギン酸が活躍しています。
◇アルギン酸のグレード分け
水に溶けないアルギン酸は、粘度によるグレード分けができません。そこで、水中で膨潤しない「キミカアシッドSA」と、膨潤するタイプの「キミカアシッドG」とに分けられています。 その他、特殊な品質規格のご希望がある場合は、弊社営業部までお問い合わせ下さい。



