国家資格「パン製造技能士」を取得
食品開発に挑む若きリーダー
食品アプリケーションラボ
チーフ
# 30代
# 女性管理職
大学院で高分子化学の研究に没頭した。そんな日々の中、ふとしたことでアルギン酸と出会うことになる。
「研究室が小学生や中高生対象の『体験実験教室』を開いていて、人工イクラを作る実験を行ったんです。材料は高分子構造を持つアルギン酸でした。生徒にも好評で面白い素材だと思ったのですが、就職活動でアルギン酸を専門に扱っているKIMICAを知り興味を覚えました」
会社説明会に参加して驚いた。あの「人工イクラ」の素材がとてつもない可能性を秘めていることを知ったからだ。アルギン酸という一つの素材に特化して専門性を追究している企業姿勢にも感銘を受けた。有機化学関連の企業をいくつか回ったが、最終決断は早かった。
「内定をいただいたときは本当に嬉しかったですね。説明しにくいのですが、プロフェッショナルとしてアルギン酸の特性を突き詰める、独特な空気感がKIMICAにあふれていたことも決め手となりました」
入社以来、アルギン酸が持つ食品の物性改良効果を検証するアプリケーション開発を担当している。物性改良できる素材はアルギン酸のほかにもあるが、パン、麺、フィリング、ドレッシング、畜肉など、幅広い食品に改良対応できる素材であることが最大の特性だ。
「入社当時はアプリケーション開発の専門部門が発足してまもない時期で、まだ見ぬ可能性が広がっていました。最初はグミを溶けづらくする開発に取り組んだのですが、これはスキル不足で断念しました(笑)。しかしさまざまな経験を経て、次々にアルギン酸の特性を応用した食品改良の成果が実証されるようになったことが誇らしいです。いまでも新たな効果を示す発見があると、ワクワクした気持ちになります」
日々の開発業務に従事しながら、国家資格である「パン製造技能士資格」を取得した。2年間のパン製造の実務経験が受験の必須条件であり、学科試験と実技試験が課される難関資格だ。
「資格取得で得られた知識と技能に裏付けられた提案を顧客に示せる体制が整ったことで、アプリケーション開発の展望が大きく開けたと思っています」
休日は自宅周辺を散歩することが多い。気になっていた店を訪れたり、新規開業したカフェを見つけてくつろぐことを楽しみにしている。クルマで近くのアウトレットモールへ出かけたり、高速バスで東京に遊びに出かけることも。「バスなら運転のストレスもないし、眠っている間に目的地に到着するので楽です」と笑う。
製パン機や製麺機をはじめとした、プロ仕様の調理設備と試験設備を備えたガラス張りの「食品アプリケーションラボ」がアプリケーション開発の最前線だ。ときにはお客様を交え、若手メンバーとともに、日々アルギン酸の効果を検証している。
「ラボは必要に応じて、まだまだ設備を拡充できるように余力を残している状態です。そういった意味で、今後もどんどん開発に注力させてもらえる環境と実感しています」
現在はチーフ(課長職)として開発グループを率いている。研究開発職と管理職という二つの職務に対する思いを問うと……。
「チーフ職への打診があったときは身が引き締まる思いもありましたが、プレッシャーの方が強かったですね。会社の期待に応えることができるのだろうかって……」
チームをまとめるということは、それまでとは違った視点を持つことが必要となる。自分自身の業務はもちろんだが、メンバーへの業務の割り振りが重要だ。チーム全体が遺漏なく開発業務に当たれる環境整備、日常的なコミュニケーションも欠かせない。
「試験・検証の進捗は常に確認して、直面している課題についてのコミュニケーションは絶やさないようにしています。ただ個人的には、メンバーとの距離感が大切だと思っています。過度に干渉しないというか、個人の裁量に任せられると判断した部分はそのまま見守るよう心がけています。重要なのは、問題が生じたときにいかに早く正確に状況を把握するかということ。そのためにもメンバーたちが話しやすい環境を保つことが不可欠です」
目標に向かって開発を進めていても、想定通りにいかないことや、うまくいかない場面もある。その際は、上司や同僚の意見を参考にしながら、試行錯誤を重ねて開発を進めるようにしている。仮にうまくいかない場合でも、食品との相性や使用条件の違いによって結果が左右されることも多く、そうした知見を得ることも重要だ。お客様がアルギン酸を試した際に結果が思わしくなかったとき、どのように改善すればよいかを提案できるようになったことは、貴重な経験になっている。
「営業と一緒に、お客様と直接話をする機会が増えたことが大きな契機になりました。それまではラボでの試験がメインで、展示会くらいしかお客様と接する機会はありませんでした。お客様の課題を直接把握できるようになったことで提案の可能性が広がったように感じています」
上司部下の距離が近く、部門間の風通しのいいところがKIMICAの魅力だと感じている。これまでも自身の思い・疑問・提案を真摯に受けとめ、応えてもらってきた。
「上長の許可とか組織的な段階を経ることはほとんどなく、世間話みたいに自然な形で部門長に直接疑問点を質問・相談したり、アドバイスをもらえる風土は得がたいと思っています」
活用シーンの広がりが注目されるアルギン酸だが、食品改良に新たな効果を生み出すアプリケーションを開発することが目下の目標だ。