新人育成の要「インストラクター制度」のカリスマ
製造部・製造開発部チーフ
# 20代
# 人材育成
姿勢がいい。背筋がピンッと伸びている。口調は淡々として丁寧で、人柄のよさを感じさせる。製造部と製造開発部の兼務というのは、どんな日常なのだろうか……。
「製造部の主な仕事は工場の工程管理や改善策の検討、スタッフの教育です。製造開発部の主な仕事は、製造ラインの点検、設備業者と打ち合わせ、施工業者との調整です。製造ラインの改善点を見出して、設備投資への道筋をつけて経営陣に提案します」
要は、製造現場の、ハード・ソフトを含めた全体を俯瞰・管理しているということだ。そして……組織図によると、二人の上司がいる形になっている。これは相当珍しいのではないか?
現場の作業量も膨大ですし、多くのスタッフが関わる職場ですので、役割分担を明確にする必要があります。言い方は難しいのですが、上司が二人いるというのは、ある意味幸せなことだと感じています。仮に、片方がうまく行かなくても、もう片方で取り返せばいい、と考えると気持ちも楽になります(笑)」
「あまり得意ではない」と謙遜するコミュニケーション力だが、担当する業務は、人との対話が欠かせない。円滑に製造現場を稼働させるためには、スタッフとの不断の対話が欠かせないし、何気ない会話から、改善点が浮き上がることもある。
「製造ラインは24時間体制で稼働しているので、不慮のトラブルがあったら、いつでも駆けつけられるよう日々過ごしています。もしラインが止まるようなことになったら、会社に大損害を与えてしまいますから。そんなトラブルを未然に防ぐために、現場でのコミュニケーションを絶やさず、ちょっとした懸念・疑問の声を細かく拾うようにしています。新規設備の導入に関しては、比較検討するために、複数の、外部の会社とやり取りが欠かせません。リスクを回避するために、いかに必要な情報を引き出せるかは、日頃のコミュニケーションが不可欠です」
二つの部署の同僚や、後輩たちとの飲み会が楽しみです。上下関係も何もない、和気藹々とした雰囲気が好きです。
趣味はスキューバダイビング。休みがまとめて取りやすい環境なので、房総の各地でダイビングを堪能しています。近場だと、館山の海はすごくきれいですよ!
国内唯一のアルギン酸メーカーであるKIMICAは、SDGsのトップランナーとしての側面もある。
「設備関連の会社の方たちと話していて、創業の経緯や事業への取り組みが、いかにSDGsの理念に沿っているかを説明すると、かなり興味を持ってもらえます。しかもそれは、環境問題が声高に叫ばれるようになる遥か以前から、KIMICAが自然に実践してきたことですから、驚くばかりです」
生きた海藻を刈り取るのではなく、海岸に打ち上げられた漂着海藻を拾い集めて原料を確保すること。化石燃料を焚いて乾かすのではなく、砂漠で天日乾燥させること。継続的・安定的に海藻を買い取り、チリの漁民の生活水準を大幅に改善させたこと。電力も濾材も必要としないユニークな生産方法を確立したこと etc.
「マニアックというか、かなりユニークな会社だと改めて思いますね。KIMICAは就活で初めて知った会社でした。採用サイトを見てもいまいちピンとこなかったのですが、会社説明会で、日本とチリを結ぶ壮大な関係性が実感できました。『本当に海藻を使ってるんだ! エコな会社だ!』って」
全社的に一目置かれているのが、KIMICAの新人教育の要ともいわれている、「インストラクター制度」のカリスマとしての存在感だ。新人は1年間、先輩社員(インストラクター)のもとで、仕事のイロハから、社会人としての心構えを学ぶ。その薫陶を受けた新人が、経験を経てインストラクターとなり、次の世代に、自分が学んだことを伝えていく。その系譜の基点として、若い社員から信頼を得ている。
「カリスマなんて、とんでもないです(笑)。私は何もしていないですよ」
再びの謙遜だが、そのそっけなさの裏に、特筆すべき優しさを感じさせる。それは次の発言からも明らかだ。
「たまたま、初めてインストラクターになって担当した新人が、明るくてコミュニケーション能力が高かった。それだけです……」
KIMICAはいま、次のステージへ向けての過渡期にあると感じている。環境に配慮した排水処理システムの新設、医療用材料増産を目指す生産設備の刷新と、自らに課せられたプロジェクトで、自分の存在感を高めたいと思っている。
「次のフェイズでは、プロジェクト全体を企画し、推進する立場になっていたい」
薫陶を受けた後輩たちに支えられる、心優しきカリスマの夢は大きい。