欧州市場を任された
海外営業のエキスパート
国際部ゼネラルマネジャー
# 経営層
# 海外営業
# 海外出張
# マーケティング
学生時代に、バックパッカーとして世界を巡った。その経験を活かしたいと思い、海外とつながりが持てる仕事に就きたいと思うようになった。
「中学校の英語の先生が、海外を巡った話をされていて、面白そうだと思ったのがきっかけです。『若いうちに広い世界を見てきなさい! それも一人で、自分の力だけで行きなさい!』という言葉を真に受けてしまった(笑)。それで学生時代に多くの国を旅行したのですが、そのとき痛感したのが自分の英語力のなさでした。現地の人たちや他の国から来た学生たちと話す機会に、自分の意思がうまく伝えられないことが、もどかしかった。『言葉が通じれば、もっと楽しく旅行ができる……』と実感し、それから本気で英語を勉強するようになりました」
電子精密機器メーカー、機械部品メーカーなどで海外営業を経験してKIMICAに出会った。
「アルギン酸という面白い製品を扱っていること、さまざまな業種の取引先とやり取りできるという、仕事の広がりを感じたのが、転職の決め手になりました」
アルギン酸の応用範囲の劇的な拡大、取引先国・企業の増大に伴い、現在は欧州市場の営業責任者を務めている。ヨーロッパは、海外売上高が70%を占めるKIMICAにとって、最重要市場の一つだ(欧州の売上高は全体の約15%にも上る)。
「新規顧客開拓、既存顧客の維持・拡大、マーケット動向調査、市場戦略の立案・実施が仕事の中心です。デュッセルドルフ(ドイツ)のKIMICA Europe GmbHの設立も任せていただきました。現地の法律への対処が難しく、設立までに時間は要しましたが、何とか達成することができました。ヨーロッパで事業を展開する日本企業が集まっている街ですから、ここを基点として、さらなる事業拡大を目指しています」
ダイエット目的で始めたランニングにハマってしまい、フルマラソンを完走するまでになりました。自己ベストは3時間22分です。当時はかなり入れ込んでいて、記録更新に力を入れていたのですが、コロナ禍以降は、週末にランニングするくらいになってしまったのが悩みです。海外出張中は、時差ぼけ解消を兼ねて早朝にホテルの近辺を走るのが楽しみです。ロンドン、パリ、ミラノなどの有名な街から知られていない小さな街まで、世界中の都市を走っています。道に迷うことも多々ありましたが、いまはスマホの地図があるから無事帰れます。助かりますね。
さまざまなバックグラウンドを持つ海外の取引先と、密接なコミュニケーションを取りながら、問題点・要望を正確に把握・理解する。それを元に、新たな製品の提案を行うことが、仕事だけではなく、自分自身の知見・視野を広げることにつながっていく。
「ヨーロッパには競合のアルギン酸メーカーが3社拠点を構えており、完全アウェーの状況です。そんな状況下で、KIMICAを選んでもらうためには、さまざまな、不利な条件を乗り越えなければなりません。その過程一つひとつに難しさを感じます。品質の高さはもちろんですが、問題解決への提案力や安定供給力、アフターサービスも含めた総合力で挑んでいます。そしてKIMICAには、海藻採取からアルギン酸の製造まで、サステナビリティを強くアピールできる事業展開の歴史・実績があリます。環境意識の高いヨーロッパでは、それが大きなアドバンテージになると思っています」
取引先とのコミュニケーションでは、誤解を招かないようにできるだけ丁寧でわかりやすい説明を心がけている。
「イギリス、アイルランドを除けば、ヨーロッパ人は英語ネイティブではなく、外国語として使っているので、お互い様っていう気はしますけれども……(笑)、やっぱり、メールだけで細かいニュアンスを正確に伝えるのは難しいですね。その場合はネット会議を活用して、お互いの意思疎通を図ります。もう一つ気にかけているのは、お取引先から観た日本や日本人観です。彼らは前面に立っている私を通して日本、そして日本人を観ていると思っています。変に勘違いされないよう、態度や言葉遣いには細心の注意を払うよう気をつけています」
年5~6回は海外出張に赴く。打合せのアポ取りから日程計画、ホテルなどの予約はすべて一人で行っている。
「効率的にスケジューリングを行うことが重要ですが、そこは百戦錬磨、かなり慣れました。今年は欧州の取引先の、チリの工場や海藻採取現場を視察したいという要望に応えるため、同行出張しました。その後欧州へ移動して、6カ国の取引先で商談しました。ハードでしたが、苦にはなりませんでしたね」
出張中トラブルに見舞われることも少なくない。突然のフライトキャンセルで、別便確保、ホテル予約の変更、アポ時間の変更を、慌ただしくこなしたこともある。スーツケースが空港で所在不明となり、残りの出張期間を着の身着のままで乗り切ったこともある(スーツケースを丸ごと盗まれたことも)。
「海外では、日本のような、懇切丁寧なカスタマーサービスは期待できません。問題解決のためには、自分が積極的に行動し、意志をはっきり伝えることが重要です。さまざまな体験を経て、多少のことでは動じない度胸、寛容性が身につきましたね」
一方で、海外の人たちとの得難い交流体験も思い出深い。
「バングラデシュでは、取引先の方が私の誕生日を覚えていてケーキを用意してサプライズで祝ってくれたことがありました。デンマークでは、空港で荷物を紛失(ロストバゲージ)したと取引先に話をしたら『家にいらないスーツケースがあるから使っていいよ』と、わざわざ自宅から持ってきてくれました。アメリカでは、ランニング中に転んで怪我をしてうずくまっていたら、親切にホテルまで送ってくれたことも。これらは一例ですが、さまざまな国で経験した、さまざまな人たちとの交流は思い出深いです」
国境や民族の違いを超えて、人と人が交流することの意味を熟知する──国際派の営業スペシャリストは、KIMICAの世界展開を、これからもリードし続ける。