未来を託された
医療材料製造の司令塔
医療材料製造部ゼネラルマネジャー
# 30代
# 経営層
# 海外駐在
大日本帝国海軍連合艦隊司令長官・山本五十六海軍大将は、日米の戦争を回避するために奔走した、開明派の軍人として知られている。
「古いと言われるのは承知の上ですが、その言葉には、時代を超えた重みというか、今でもまったく色あせない本質が込められていると思います。いわゆるコーチングの要諦をすべて言い表している……」
自分を律するため、また、部下たちを指導する際の指針とする、山本の有名な言葉とは──。
やってみせ 言って聞かせて させてみせ 誉めてやらねば 人は動かじ
話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず
やっている 姿を感謝で見守って 信頼せねば 人は実らず
現在は、次代の《柱》となることが期待される、医療用アルギン酸製造の責任者を任されている。入社以来、技術開発部、南米・チリの駐在員、製造部、品質保証部を経験した。KIMICAの製造開発のあらゆる部分に精通したスペシャリストだ。
「私が着任した当初は、自分を含めて5名のチームでしたが、3年を経て30名にも及ぶ体制になり、医療材料を取り扱う専門部署になりました。自分でも驚くのですが、開発を進めれば進めるだけ、医療材料としてのアルギン酸の可能性が広がってくる。すごいとしか言いようがない素材なんです。現在は、より大きな市場に向けた急務になっています」
「海藻のヌルヌル成分が、人の命を救う素材に生まれ変わるとは、入社当時は想像もしていませんでした……」という感慨もあるが、医療材料開発に対する想いは、また特別なものがあるという。
「KIMICAは長年、食の分野を中心に世界中のニーズを捉えてアルギン酸を供給してきました。人の口に入るものですから徹底的な製造管理が求められます。しかし、私がいま製造している医療グレードのアルギン酸は、体に直接注入されて人体に直接的に作用します。食品とはまた違った視点で、乗り越えなければならない厳しい基準が多々あリます。本当に緊張しますね」
休日にクルマをピカピカに磨き上げること。愛車は「ホンダ・ビート」。1991〜1996年に製造されていた、オープンタイプのミッドシップ・スポーツカー。エンジンには、当時のホンダのF1テクノロジーも組み込まれた、今やクラシックカーにも分類される名車です。それをコーティング材やワックスを各種試しながら、徹底的に磨く。無心になれるんです。やればやるだけ成果が目に見えるのも嬉しいです。仕事もそうであればいいのですが……(笑)。
子どもと遊ぶのも楽しみで、よく娘を乗せてドライブに出かけています。
チームが急激に大きくなったことに伴い、自分一人の頑張りだけでは目標が達成できないことは、身にしみて感じている。
「メンバー一人ひとりには、それぞれ与えられた役割があり、全体がパズルのようにきっちり組み合わされないと、チームは機能しません。どこかが欠けていたり、一部の負担が大きくなることがないよう、常に気を配っています」
若い人たちに接するにあたっての秘訣を問うと──。
「若い人といっても色々なパターンがあります。たとえば、『自分でやりたい、やらせてください!』と手を挙げるタイプもいれば、『右も左も分からないので、指示してほしい』というタイプもいます。どれが優れている、悪いということはなく、それらは個性であり性格であると捉えるようにしています。私の姿勢は『やってみせ、言って聞かせて、させてみる……』ですから、基本の対応パターンは変えずに伝え方を少し変えるだけ。まずは《やり方を見せて・説明して、やらせてみる》ということです。すべての若手にチャレンジするチャンスを与えることが大切ですから」
社内結婚した妻が品質保証部にいるため、提出した計画書、報告書、データに妻からダメ出しがあることもある。なかなかに微妙な局面だが、どのように対応しているのだろうか。
「どちらも見る角度が異なるだけで、取引先のことを考えていることに違いはない。お互い遠慮なく意見を出し、議論を重ねて、最善の結論を導き出します。心掛けているのは就業時間内に終わらせること。たとえ翌日持ち越しになったとしても、家庭に仕事の話しは持ち込まないと決めています」
画期的な医療材料となる、アルギン酸の新製品が、間もなく市場に送り出される予定だ。それに続く製品も発売に向けて、着々と開発が進行している。
「誰もやったことがないことに挑戦しているわけですから、思い通りにいかない難しさがある。でも、難しいからこそ面白いんです。友人・知人から、『○○が痛くて…』とか、『□□の調子が良くなくて…』と聞くと、『もう少しだけ待っててね、症状に有効な製品が発売されるから』と、心の中で呟いています(笑)」
元々の気質に合ったのかもしれないが、駐在を経験した南米チリの「ラテン文化」がなぜかしっくりきたと感じている。身についた「ちょっとやそっとではへこたれないぞ!」というポジティブシンキングで目指すのは、「医療材料を軸としてKIMICAの夢を実現させること、そして自分がいたからこそと確信できる、成果を挙げること」だ。