京都大学に出向した
30代の研究開発トップ
技術開発本部ディレクター
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入社5年目に、京都大学ウイルス・再生医科学研究所へ出向する機会を得た。
「顧客の医薬品メーカーから、『大学で再生医療の先端研究に触れてみませんか』というお話があり、私が2年間派遣されました」
研究内容は、次代の事業の《柱》となることが期待されている、医療用アルギン酸の可能性に直結するものだった。
「再生医療の分野で日本トップクラスの教授の指導のもと、京大の学生や他企業からの出向者に混じって、研究しました。企業ごとに異なる考え方や手法の違い、驚くほど進化している日本の再生医療研究の実態を目の当たりにして、本当に刺激的でした。修学旅行で一度行ったきりの京都ライフを楽しめるかも……という思いは、研究があまりにも忙しくて、早々に諦めざるを得ませんでしたが(笑)」
技術開発部は、多様な視点からアルギン酸の可能性について考え、実証する役割を担う。取引先への提案やトラブル解決などのコミュニケーション、理解と普及を促進するためのアルギン酸勉強会の実施、新製品やアルギン酸のアプリケーション(活用・応用法)の開発、大学や企業との共同研究、臨床試験の進捗管理と、守備範囲は広い。個人的には、業界誌向け論文・文献などの執筆、そして何より部門全体のマネジメントという重責がある。
「あれこれ、いろいろと経験させてもらっているなとは思いますね。なんというか、定型的でないもの……『これは、製造部門とか品質部門の範疇ではないな』、という案件が、最終的に我々のところに回ってくる。『とりあえず技術開発にやらせてみよう』というパターンです。案件ごとに対処法を考え、マネジャーと意見を交わしながら、メンバーに仕事を割り振ります。元々《難しそうでも、まずはやってみる》をモットーとして仕事しているので、望むところではあるのですが(笑)」
とはいえ、社内では日々、さまざまなことが提起される。営業部門から、取引先別に上がってくる製品開発の交通整理にも頭を悩ませることがある。細かなスペック違いに対応できるかできないかのラインを見極め、製造部門や品質部門と調整するのだが……。
「どの部門も、誠実かつ確実に、オーダーに応えてくれると感謝しているし、信頼しています。しかし、ギリギリの分岐点が存在することは否めない。どこが最善の解決策=落としどころなのか、それを導き出すのは、部門を跨ぐコミュニケーション力しかないと思っています」
旅行が好きで、温泉とかによく行きます。長野県の白馬に、高アルカリ性の温泉がありまして、そのお湯に浸かると、全身がツルツルッと美肌になりますよ(笑)。
映画鑑賞も好きです。1980~90年代の、「スピード」とか「ダイハード」などのアクション映画を中心に楽しんでいます。映画館に行くだけでなく、自室でも思いっきり楽しみたくて、オーディオ設備やプロジェクター、スクリーンも揃えてしまいました。お隣の部屋に迷惑がからないよう気をつけて上映していますが……。
大学院では、バイオ燃料について研究した。KIMICAとの出会いはまったくの偶然だった。
「就活サイトから配信されるメールで、たまたま目に止まったんです。国内で唯一、海藻からアルギン酸を製造している会社であり、アルギン酸を通して工業、食品、最先端の再生医療など、幅広い分野に貢献している。特定の分野にとらわれることのない、広い可能性を感じて応募しました」
「アルギン酸の先駆けとして培った独自の技術をもって、世界中の人びとの健康で豊かな暮らしづくりに貢献する」という企業理念のもと、KIMICAは不断のチャレンジを続けてきた。
「やり遂げる意思があれば、いろいろなことに挑戦できる会社です。確固たる自分の考えがあって、それを行う意義をきちんと説明できれば、会社は全面的にバックアップして、チャレンジさせてくれます。そして、アルギン酸は果てしない活用方法や、効果が期待される得難い素材です。増粘剤・ゲル化剤という範疇に分類されていますが、その活用方法については、まだまだ、いくらでも研究開発の余地があるブルーオーシャンなんです」
2011年から続く、大学との共同研究課題である、機能性素材としてのアルギン酸カルシウム研究が東京理科大学に引き継がれることになり、同大学の研究員を兼務することも決まっている。
「当面は、会社と大学を行き来することになりそうです。アルギン酸の製造は、KIMICAの基幹技術ですから、技術開発の根本に立ち返って、改めてアルギン酸という物質の不思議さ・面白さに触れられると期待しています」
夢は「これは自分がやったと、後々まで語り継がれるような仕事を成し遂げること」と、笑顔で語る。若手経営層として、研究者・技術者として円熟することを目指す日々は、これからも続く。